幼少期の私、歯科医師になることへの使命感

私は1977年生まれ、当時は多気町出身の大先生(父、黒井満)が松阪市民病院の初代口腔外科長であったことから 市民病院の社宅が松阪市久保町にあり、そこで幼少期を過ごしました。

父からは歯医者になれと言われたことはありませんでしたが周囲の人間から将来歯医者になるんだねと言ってもらうことが多く、小学生ながらに漠然と歯科医師になることへの使命感を抱いていました。

小学生時代は登山が趣味の母親によく近場の堀坂山に連れて行ってもらいました。一度日本アルプスに挑戦し、槍ヶ岳を登った時のことは鮮明に覚えています。とんでもなくしんどかった事、最後の槍の部分の登頂はすごく怖かった事。しかし登頂して得られた達成感と途中で見た絵葉書におさめたような景色は忘れません。人生の歩み方を教えてもらった気がしました。

小学校5年生の時に祖父(二代目くろい歯科院長、黒井晃一)が他界し、父は三代目くろい歯科院長として多気の医院を引継ぎます。 曽祖父(黒井賢次)の代から続くくろい歯科を引き継ぐのは大変なことだったろうと今では思います。

中学高校時代、記憶に残る仏教の教え

一方私は、中学受験後、津私立高田学苑に進学し学業に没頭する日々を送りました。

それまでは感じていなかった周囲の学力のレベルの高さに驚き、ついて行くのに必死だった日々でした。上には上がいる事を痛感した中学高校時代。その中で記憶に残っているのは仏教の教えでした。真宗高田派の僧侶を兼任する教師が多く在籍し、毎月講和を聴講すると自然と頭に入ってくる教えがあります。

「他力本願」

他力とは他をあてにして生きるという意味ではなく、私たちはすべからく他の様々な力で生かされているということ。特別に信仰を持っているわけではないのですが、穏やかかつ厳かで澄んだ空気を感じる講和の時間が好きでした。

そして岡山大学歯学部への進学

大学は岡山県にある国立岡山大学歯学部に進学しました。歯学を志し、学力的距離的に条件が合致した大学であった事、環境が良かった事が選択した理由です。今思うとこの選択はとても良かったと思っています。

岡山大学は歴史としては非常に古くからある大学ですが、歯学部は全国でも一番若く、その分活気に溢れていたのです。柔軟でクリエイティブな思考を養うことができ、従来の考えに固執せず果敢にチャレンジする姿勢も自然と身についたように思います。

イギリス・ロンドンでの経験と、大学病院での勤務

しかし臨床実習で実際に患者さんと接することになる大学5年生になる手前で、私は1年間の休学をしました。このままストレートに階段を上り歯科医師となる前に大きな人生経験を積まなければ自分を成長させることができないと思ったからです。

半年間は日雇い労働をして、その後渡英し数ヶ月イギリスのロンドンで生活しました。この経験を経たことは私にとっては非常に大きく、多様な価値観を持つ多様な人種の人達と接し、文字通り世界観を広げることができました。

無事に復学し大学を卒業、国家試験に合格した私は尊敬する先生の誘いを受けて大学病院に2年間勤務します。岡山大学歯学部インプラント補綴学分野(旧 第一補綴科)。臨床ではインプラントや義歯(入れ歯)、クラウンブリッジ(被せ物)、顎関節症などをメインに診療し、同時に夜は研究にも携わりました。IADR(国際歯科学会)でスウェーデンのイエテボリに行き、研究発表したことは輝かしい思い出の一つです。

東京での修行、素晴らしい先生たちとの出会い

その後、岡山の開業医(グランデンタルクリニック)で4年間、基本的な治療技術・知識を習得した私は最後の修行をしに東京に向かいました。東京ミッドタウンデンタルクリニック。六本木、旧防衛省跡地にたつ巨大なビルの中にあるこのクリニックでさらに先進的な技術を学びました。

当時、私の同僚はハーバードやUCLA等への留学経験を経たエリートばかり。そんな中に田舎出身の私が一人ポツンといるような状態。力の差を感じつつも、まさにスポンジのように技術知識を吸収しました。今考えても素晴らしい環境であり、今でも歯科界のトップランナーとして活躍する先生達と出会えたことは貴重な経験となりました。

地元多気への帰郷と、くろい歯科クリニックでの新たな挑戦

臨床に携わって10年。父が身体を一時壊したことをきっかけにいよいよ私は地元多気に帰ります。

今まで培った技術知識で地域医療に本気で貢献するという夢を持ち、帰ってビックリしたのは、一緒に働くスタッフ達の素晴らしさです。今まで働いてきた中でもコミュニケーションや患者さんへの 対応はピカイチでした。このスタッフ達とならこの先もっともっと良い医院を創ることができる!と確信しました。

それから副院長として、また5年前からは院長として、10年間地域医療に邁進しました。そして昨年からは医療法人にじいろ くろい歯科クリニック として新たにスタートを切りました。毎年毎年成長できています。

「一人一人に向き合い、一人一人が輝く」

口腔を通して、患者さんの人生を救い、より良いものになるように貢献する。そしてそれができるように自分達が研鑽を怠らず成長を重ね、自分達自身も輝いていく。

この想いを胸に、これからも一歩一歩進んで行きたいと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

 

2021年1月1日 院長 黒井建志